読んだのずいぶん前だけど、書こう書こうと思って書けていなかった。副題にあるように「思考がとまる」「言葉に詰まる」などの現象が起こるのはなぜか、どうすればそれを防げるか、といった内容を、医者である著者が過去の診察経験から代表例を拾い上げて、平易に述べたものです。何となく、こういうことあるんで。
内容はとにかく平易、といっても悪い意味ではなく、分かりやすく、読みやすい。これだけ読みやすい、親切な文章というのはあまり経験ありませんでした。といっても、事例に基づいているだけに内容はしっかりしています。同じNHK出版の生活人新書にある「ゲーム脳の恐怖」とは大分レベルの違った、良著だと思います。
出世することで、自分にとって楽な仕事を選びやすい環境になるがゆえに、そういう仕事を選ぶことで、脳の一部しか使わなくなる、とか、ネットを多く利用することで、「思い出す」ことをしなくなった、といった、脳の局所利用の弊害が主に述べられています。大体をまとめると「イヤなことも厭わず、色々な脳の使い方をしましょう」という話になるのかな。
私もnintendo DSの「脳を鍛える…」も持っていますが、あれの中でも「やりたい」ものと「やりたくない」物が結構分かれますよね。私は記憶系(初代だと3文字、二代目だと漢字を覚えるやつ)が出てくると、あまりに覚えられないので気分が憂鬱になるのですが、むしろそういうのを敢えてやっていかないと、ネット時代に弱くなりがちな「記憶の復活」能力がより衰えていくのかも知れません。
これも読んだの前だな。脳の本が続いていますが、こちらは方向性が違って、人工の脳を実現するという目的を目指す著者(Palm Computing社等の設立者として有名)が、これまでの自分のアイデアの根幹+研究の成果を平易にまとめた物。
内容を一言でまとめると「脳の働きは、全て予測行為を源としている」といったところか?脳の神経細胞は、受けた刺激を元に、次に刺激が来た時、そのパターンを予測する。その予測結果と刺激が同じ場合、違う場合などで類型化されていく。その予測の行為は帰納的に、脳全体の働きも説明出来る、とまあ適当にまとめるとそういう内容。
確かにその根幹のアイデアは納得性高いです。我々が認知出来る普段の脳の動きを、そのアイデアベースに説明されると、そこは納得してしまう。そのワンアイデアを堪能するための本なのかなー。正直、大脳新皮質の説明に費やされる第6章は斜め読みしてしまいました。適当に端折って、新書サイズくらいの本だったらなお良かったかも知れない(長い本が読めない人)。お値段が2000円近いので、万人にはお勧め出来ない、かな。
これも(略)。マイクロソフトでExcelのVBA近辺の開発に携わり、その後も色々なソフトウェア(私はどれも知らなかったのですが…)の開発に携わった著者の、主にソフトウェア開発のマネジメントとか、開発環境(コンピュータ上だけではなく、職場環境)の姿とか、その他諸々について書いた本。
私はハードウェア屋さんであるのですが(Cが未だに書けません、ましてや他の言語をや)、「開発言語」と呼ばれる物を使って設計し、シミュレータでテストを行い、バグに肝を冷やし、ホワイトボックステストとブラックボックステストの利点欠点を考える、そんな世界の住人でもあります。大規模プロジェクトのある(非常に小さな)一角を任されているため、マネジメントにも、片足突っ込んでいなくもない。ということで、この本のターゲットとしている分野に関わりもあるので、何か得るところあるかな、と。
結果、非常に面白かった。こういう本に珍しく、次読みたい、次読みたいとページめくってしまいました。そういう現場で怪しい状況を生み出す怪しいシステムを、軽妙に、端的に示して、その問題点をあぶり出してくれる、そんな本でした。身につまされるんですよね。
開発環境の善し悪しを調べる12の質問(中ではジョエルテストと呼ばれています)とか、なぜ仕様書を書く必要があるか、どうやってバグを効果的にあぶり出すか、スケジュールを立てる時のポイントは、などなど、必ずぶち当たる課題に対し、軽妙に(ここ重要)どうするのが良いか、そのアイデアを示してくれます。完全にソフト開発にのみ当てはまる内容もありますが、色々得るところありました。おすすめです。